上顎前突とは?
上顎前突は、上の前歯や上あごが前方に出ている歯並びのことです。一般的には、出っ歯と呼ばれています。
原因
幼児期の長期間にわたる指しゃぶり
長期間指しゃぶりをしていると、上下顎の前後的な位置関係がずれたり、前歯が前方に傾いてしまうこともあります。永久歯に生え変わる時期まで指しゃぶりの癖が続いていると、歯並びに影響が出てくる可能性が高くなります。
歯の萌出スペースが足りず、上の前歯が通常よりも前方に傾斜
歯が並ぶためのスペースが不足しているために、上の前歯が押し出され、通常よりも前方に傾斜することがあります。
日常生活の癖(食べ物や水をのみ込む時に舌で前歯を押す癖、下唇を咬む癖など)
前歯の間に隙間があると、無意識のうちに舌で前歯を触ってしまう(押してしまう)癖を持っていることがあります。内側からの舌の力で、徐々に時間をかけて歯が移動し、上顎前突(出っ歯)になることがあります。また、下唇を噛む癖により、上の前歯は前方に傾斜し、下の前歯は内側に傾斜し凸凹になり上顎前突(出っ歯)になることがあります。
アレルギー性鼻炎、扁桃肥大などが原因の口呼吸
口呼吸が続くと、口のまわりの筋肉が常に緩んだ状態になり、歯が前に出てきてしまうことがあります。
両親や祖父母の歯並びの遺伝
生まれつき上顎の骨が大きい場合や、下顎の骨が小さい場合、顎の前後の位置関係によっても上顎前突(出っ歯)になることがあります。
弊害
前歯で物を噛みちぎりにくくなる
上顎前突(出っ歯)は、パッと見た感じだと上下の歯が噛んでいるように見えますが、歯が前後的にズレているため、実際には噛んだ時に歯が接触しない状態になっていることが多いです。
ただ、軽度な上顎前突の場合、少し下顎を前に出すように動かすと噛みきれるようになるため、本人は無意識で気づいていないこともあります。
口元が突出して唇が閉じにくく、結果口呼吸になりやすい
特に睡眠時など口唇の力が入っていない状態では、前歯と歯茎が露出し、乾燥してしまい、歯周病や虫歯の原因になります。
無理に口を閉じると、あごに梅干し状のしわができて不満そうな表情になる
上顎前突(出っ歯)は口が閉じにくかったり、他人から見てもわかりやすいためコンプレックスに感じたりする方は少なくありません。また、そのままにしていることによって、お口まわりにしわやたるみが生じやすくなり、お顔が老けた印象になってしまったり、不満そうな表情になってしまうこともあります。
転んだ時に上の前歯を折りやすいことがある
前歯が出ているので、転倒やスポーツで前歯に外傷を受けやすくなってしまいます。
治療
低年齢(混合歯列)の場合(主に小学生)
- 上あごの成長を抑えるために、取り外しのできる装置を使う(ヘッドギアー)
- 後退している下あごを前方へ成長させるために、取り外しのできる装置を使う(バイオネーター等)
学校からの帰宅後と夜(就寝時も)に使う
永久歯が全て生えそろっている場合(中・高校生、成人)
-
固定式の装置を使う
歯の表側にマルチブラケット装置をつけて、ワイヤーの矯正力により歯を動かしていきます。
金属の装置ではなく目立たないプラスチックやセラミックの装置をつけることもできます。歯の表側の装置を望まない場合には、歯の裏側に装置をつけることもできます(リンガルブラケット装置)。 -
取り外し式の装置を使う
ワイヤーやブラケット装置を使わず、コンピュータを用いて作製された透明なマウスピースを段階的(約2週間ごと)につけ替えることで歯を動かしていきます。
*上顎前突の治療は、あごの成長をコントロールできる年齢では早期治療をおこないます。症状の程度や開始する年齢により、非抜歯治療か抜歯治療かが決まります。
上顎前突に関するよくある質問
5歳の娘の指しゃぶりの癖が未だに治りません。心配です。
指しゃぶりの癖は、大人の歯が生えてくるまでに治れば問題の無いことが多いです。
ただ、程度など個人差がある為、心配な場合は一度ご相談にいらして下さい。
出っ歯の矯正治療は、抜歯が必要ですか?
子どものうちはまだ顎の成長余地がありますので、非抜歯で矯正治療を行える可能性は高くなります。大人になってからの出っ歯の治療ですと、抜歯を伴う治療が多くなります。
絶対に歯を抜かないとダメですか?
歯のガタガタの度合いや開始する年齢により、抜歯を伴う治療をお勧めすることはありますが、必ずしも抜歯をしなければいけないわけではありません。患者様の希望やライフスタイルなどを考慮し、最適な治療方法をご提案させていただきたいと考えております。
部分的な矯正でも、出っ歯の治療はできますか?
出っ歯の程度によって異なりますが、部分矯正で対応できることもあります。歯を引っ込めるためのスペースがなく、抜歯が必要なケースでは部分矯正は難しくなります。